■ETV特集を視聴してベトナム戦争の米軍と日中戦争の日本軍が置かれた位置が正に同じだと感じた。
「臓躁病」発症の多い北支の1940年頃は日本軍は主要都市と結ぶ交通路を支配していたが、その周辺は中国軍(主に八路軍)
支配地域に囲まれていた。現地の日本兵は非情な圧迫感を感じていただろう。しかも相手は正規軍だけでなく普段は農民の(そ
の土地の住民)民兵であった。つまり周り全てが敵だったと言える。
周り全てが敵なのは考えてみれば当然で、銃で踏み込んだ他国の軍隊に抵抗する、撃退しようとするのはそこの住民にとっては
当たり前のことだ。しかも食料は現地の住民から暴力的に取り上げて調達した。反感を持たれるのも当然だ。
■住民を見れば疑心暗鬼になり全てが民兵に見えただろう。殺す前に殺す行動に繋がったのも心理として良く分かる。
そういう心理が踏み込んだ集落を最後には焼き尽くして駐屯地に戻った日本軍の行動となったと思う。
■それから25年後。米軍はベトナムでかつての日本軍と同じ立場になっていた。
点と線は確保しても周囲は解放区に囲まれていた。住民と民兵との区別もつかなかった。結局、無差別爆撃やベトナム人集落を
焼き尽くす戦闘行為に繋がった。まさにかつての日本軍と同じ状態だった。
そして多くのベトナム兵が戦争のトラウマに病むことになった。兵士の3割以上とも言われている。
■ベトナムにおける米兵と同じような環境にあった日中戦争時の日本兵に戦争のトラウマ(臓躁病)が発生していたのもうなずけ
ることだ。
■しかし、ベトナム戦争の米兵の戦争のトラウマはすぐにアメリカの社会問題となり、最善かどうかは別にして種々の対策が講じ
られてきた。
ところが日本はどうだ。ベトナム戦争から50年が経った。にも拘らずアジア太平洋戦争(それ以前の戦争は勿論)で日本兵に
戦争のトラウマが発生したことがいまだに隠されている。2018年8月25日のETV特集が初めて日本社会に明らかにしたとい
うのが現実だ。
ETV特集の中で元国立武蔵療養所の古屋龍太さんは戦争のトラウマを病んだ復員日本兵に対処する「制度もない、施設もな
い、病院が終の棲家になった。世論も知らない。人権の問題なのに関係者も鈍感だ。これはこの国(日本)だから起きた」と話
しているが、そういう状態は今も改善されていない。変わらない。