私もまたガンと生きる。池江璃花子さんに思う。
私・黒井秋夫は2015年1月に前立腺ガンを宣告され3月5日に全摘手術しました。直後は前立腺ガンのマーカーのPSA値が0になり、ガン細胞は無くなり完治したと思っていました。
それが3か月検診を経るごとに少しずつ上昇し昨年11月には0.169になりました。
おそらく、手術前に微小なガン細胞が前立腺から遊離していたものと思われます。そのガン細胞が身体のどこかでゆっくりと増殖しているということなのでしょう。
本を読むと、前立腺ガン再発の基準は日本では0.2と言われていて、このままのペースだと今年中にも達すると思います。つまり、再発という診断が下るのは確実な状況です。
ただし、主治医からは現在の欧米では0.4まで治療は開始しないとの説明を受けています。とすると、それは4,5年先と言う事になり、放射線治療かホルモン治療になります。いずれにしても前立腺ガン細胞がどこかで増殖している状態なのでしょう。
病気の多くは向こうからやってくるので逃れようがありません。
前立腺ガンなどどんな予防もできないでしょう。私の努力でどうなる事ではない訳です。いわば運命と言う他ありません。ただただ、受け入れて抱えて生きて行くしかありません。というとこだと思います。
4年前に、採取した12検体の1個からガン細胞が見つかったと宣告された時には、覚悟はしていましたが大きな衝撃を受けました。しかも、入院中に肺に転移した可能性があると、エックス線画像を見せられた時には近い死を覚悟しました。さいわい肺のエックス線の陰影はその後に炎症と診断され転移ではありませんでした。
ガンの再発といわれても手術から4年も経過し、進み方もゆっくりのようなので直ぐに生き死にということではないだろうと自己判断しています。真実は分かりませんが。
ガンが再発しても私の生き方や生活パターンを変えるとかそういう事は全く考えていません。前立腺ガンを抱えて今のペースで生きて行くだけです。すでに年齢も70歳。じたばたする年齢ではありません。
「ガンがどこかで生きている」という観念は心のどこかに常にあります。だからと言ってどうこうと言うことはないのです。ありのまま、そんなことに左右されることなく生きるだけです。何をしてもしなくてもガン細胞は増殖し続けるのです。増殖するガン細胞に自己努力の術などないのです。逃れようのない運命なのです。受け入れ同化するしかないのです。それが私の人生なのです。天命です。
水泳の池江璃花子さんの白血病の発表には本当に心が痛みます。
18歳というのに、診断から間もないのに「乗り越えられない試練を神様は与えない」という言葉には驚かされた。私はガンの宣告を受けてから間もなくは冷静な判断など全くできなかった。今の気持ちに到るには長い時間が必要だった。池江さんには気張らずに自分自身のことだけを考えて欲しいと思う。心の底から元気になる事を願っている。たとえオリンピックを棒に振っても、水泳選手として再起できないとしても、池江さんの価値に何の影響もないのだと思ってほしい。
精一杯のエールを送りたい。
私は私の一部分として増殖するガン細胞と一緒に、これまで通りに「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」が世間に認知されるように活動を続けるし、畑を耕し野菜と果樹を育て、月に5〜6日はシルバー人材センターの仲間と大南東公園の草取りと清掃の仕事に通い、中国語サークルを続け、民医連の友の会活動に参加し、孫娘と遊び、娘夫婦、甥や姪たち、友人知人との親交をさらに深めたい。我が家をねぐらにしている4匹の猫たち、そして最愛の妻と、息絶えるその日まで仲良く暮らしていきたい。
2019.2.15 「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」主宰・黒井秋夫。