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ガンと生きる

 

再発、あるいは転移

 

2019年2月20日、主治医と前立腺ガンの再発を確認した。2018年11月28日のPSA値が0.234と再発の指標である0.2を越えた検査結果が出ていた。3カ月前は0.1693か月で0.065上昇した。それまでは3カ月0.015程度だったので増殖スピードが4倍になったという数値で、データを見た時には動揺した。再発のめやすの0.2をこの先1〜2年で越えるのは覚悟していたが、不意を打たれた。早すぎた。このままのスピードで増殖が続けば年末か来年にも治療開始の0.4に達する可能性がある。

 

 

 

 より具体的にこの先の人生を考える段階に来ているようだ。身体の調子は良好でガンさえ暴れなければあと10年は生きることができるだろうと漠然と思っていた。そこまで楽天的ではいられない情勢のようだ。1年1年、ひと月ひと月を大事にして行こうと思う。しっかり考えよう。

 

 

 

 だからと言って、何か特別のステージになる訳ではない。これまでのこと、やってきたことを続けるだけなのだが。もっと自覚的に狙いをもって毎日を生きる事なのだろう。と思う。

 

 

 

肺ガンで終末期病院に入院している先輩を見舞ったことがある。確かそのあと3か月程で彼は旅立ったが、ごく普通の世間話をして帰ってきた覚えがある。落ち着いていて冷静で知的な雰囲気はいつもの彼と変わらなかった。枕元に読みかけの手塚治虫のブラックジャックの漫画本があった。人生の最後にブラックジャックを読むのかと印象深いシーンだった。

私にその時が来るのは、まだ先のことだろうが、あの時は意外な情景だったが、今は何となくわかるような気がする。

それまでの日常と変わることなく普段通りに続けているということなのだと思う。普段の日常のその先に「その時」はごく自然にやってくるのだろう。

 

2019.2.20  「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」主宰・黒井秋夫。