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父と暮らせば(12)聞いてはいけないと言うバリアー

 父は戦争の話はしなかったと書いてきた。しかし「戦争の事は自分には聞くな」というそれとないバリアーを父は張っていたような気がする。つまりある種のタブーなのだと家族には思わせていたのではないか、という事だったかもしれない。私自身が子供だった頃にひょっとしたら戦争の事を聞いたかもしれない。記憶には無いが。無邪気に聞いた我が子の話題を父は無視したかもしれないし怒り顔を向けたかもしれない。ああ父は話したくないのだ。戦争を話題にしてはいけないのだと子供心に察したのかもしれない。

 そうでないと不自然ではないか。私は1955年に小学生になった。戦争終結してから10年しか経っていない。東日本大震災から7年が経った。7年前など昨日の事のように誰でも鮮明に覚えている。震災の様々な出来事が今でも繰り返し報じられている。比較して10年前までの大戦争のことが話題にさえ上らないというのは考えてみればおかしいと思う。