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防大いじめ・暴行(しんぶん赤旗)

2018年7月25日のしんぶん赤旗の1面TOP記事の見出しである。
戦慄が走る。私は看過できない。日本軍の悪弊が現在の防衛大学に引き継がれているという驚愕の事実だ。

記事によれば学生数2010人の防大で2007年からの10年で1136件の服務規律違反があり550件で懲戒処分が発生していた。
懲戒処分に該当した事例は今の時代にこのようなことを青年たちがやるのかと思うような卑劣ないじめが列挙されている。防衛大学生は自衛隊の幹部になり自衛隊員を部下に持ち指揮し教育していく立場になる人材だ。いわば自衛隊のモラルや士気を伝統として創造し受けついで行く自衛隊の屋台骨だ。
それがいじめや暴力で汚染されているとは何という事だ。

旧日本軍での初年兵への暴力は言わば通過門として当然のごとく行われていた。表向きの暴力禁止令は色々な軍機関からたびたび出されたが「精神鍛錬の手段」として一人前の日本兵にするための鍛える手段であった。何事につけ行われたビンタはその象徴であった。
命令に絶対服従する兵士にしていく、言わばことの善悪を判断したり人間らしい感情を持つことを兵士としては不必要であるとした日本軍の人間観だった。というか人を殺すことが唯一無二の兵士にはそういう人間性など必要ないのだ。そもそも人間らしい感情を維持しながら人殺しの戦場などには立てないのだ。

旧日本軍と同じように防大上級生が下級生、主に1年生に対して卑劣な非人間性に満ちたいじめが行われ毎年繰り返され受け継がれていると報じている。全く旧日本軍と同じ構造だ。
何という事だ。旧日本軍の亡霊がまだ生き乗っていたとは。

軍隊の入り口で古参兵の暴力への恐怖からPTSDに苛まれた兵士が生み出されたことが吉田裕の「日本軍兵士」や中村江里の「戦争のトラウマ」で明らかにされている。
置き換えれば「防衛大学生の下級生への暴力」はPTSDに侵された防大生を作り出していると類推できる。

自衛隊幹部、防衛大学教育担当者はこの事をどう考えているのだろう。
戦前と同じように「ただの禁止令」で事が足りると思っているなら怒りを通して悲しくなってくる。
旧日本軍の戦争とその敗北から何も学んでいないのだろうか。

どんな組織でも「人間を大事にしない」組織は腐朽する。表向き強固に見えたとしても「張り子の虎」でしかないと知るべきだ。

その暴力を告発した防大生が存在する。その事が救いだ。声すら上げられなかった戦前とそこは違う。
しかし、告発行為が今後未来もできる状況があるかどうかは保証の限りではない。