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「朝日川柳」

2018年8月10日、朝日新聞の朝日川柳

選者・西木空人

作者・清水方子

歌 ・仁王立ち矢ぶすま覚悟で逝きにけり

 

2018年8月7日、沖縄県知事の翁長雄志さんが67才で亡くなった。すい臓がんを患い見るほどに痩せてきて、2~3日前から意識が混濁していると伝えられたので気がかりだったが、こんなに早く亡くなるとは思わなかった。残念無念の思いだ。言うまでもなく翁長さんこそ一番残念無念に違いないが。

 

・清水さんは「仁王立ち」「矢ぶすま覚悟」と翁長さんの最後の姿を表現した。

  頼朝の追っ手に立ちふさがり義経を守ろうとした武蔵坊弁慶の最後の鬼の形相と翁長さんの生前の姿を重ねたのかと思う。

  弁慶は身体中に矢を 射られながらも仁王立ちして倒れず頼朝の兵の行く手を塞いだと伝えられる。弁慶の形相に驚き近づく兵はいなかったと

 いう。

 

・翁長さんの突然の訃報に安倍首相の政府は辺野古の海の埋め立てを続けるのは得策ではないと判断、当分中止するのではないかと報じられてい

  る。そうなれば「仁王立ちする」翁長さんが政府の強硬姿勢に待ったを掛けた格好だ。   

 

・翁長さんの姿は、特にガンを公表してからは孤高の人、心に決めた心情を貫くと決めた威厳のようなものを私は感じた。

 いかつい武蔵坊弁慶というよりは静かな菩薩行の修行者のように見えた。

 

・義経は伝説では平泉から更に北に逃れ、ジンギスカンに生まれ変わったという。

 翁長さんはこの世を離れたが更にどこに向かっただろうか。沖縄の上空高く舞い上がり、時代もさかのぼり日中の狭間  

 で繁栄した誇り高い琉球時代に飛んだだろうか。それとも基地はもとより軍隊さえ無くなった未来の平和な沖縄に向かって飛んでいるだろう

    か。