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「ルポ 土地の記憶」室田元美

 

 

ルポ土地の記憶 戦争の傷痕は語り続ける社会評論社 室田元美

 

□目次を記すと以下の通り!この本に記されたほとんどを初めて知りました。

 

 そして、「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」が基本に置くべき活動方向を示唆して貰えた一冊になりました。

 

 記された各地の一つ一つの取り組みは小規模であったとしても終戦を経て70年以上その土地の住民たちが事実を掘り起こし語り継ぐことを営々と続けている。謝罪は言葉だけでは終わらない。戦争の傷痕の被害者の多くは中国・朝鮮の人たちである。彼らの心に寄り添い補償を求める活動の支援をしているところもある。そういう活動が言うなら日本人としての償いと言う事になるのかもしれないと私は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■「ルポ 土地の記憶」目次・内容のあらましは下記の通り。

 

*年表で見る「明治150年」

 

1・廃墟の島の歴史実話 長崎県軍艦島、伊王島

 

2・たなばたの夜、空から降ってきたものは 山梨県 甲府の空襲

 

3・日中韓の若者たちと訪ねた、鬼伝説の山 京都府 大江山ニッケル鉱山

 

4・信州から見える、さまざまな戦争 長野県 満蒙開拓平和記念館、平岡ダム

 

5・首都圏に置かれた、軍の重大施設 東京都 浅川地下壕 

 

神奈川県 日吉台地下壕 登戸研究所

 

6・ウグイスの鳴く山里で 広島県 安野発電所

 

7・フラガールと炭鉱の町 福島県 常磐炭鉱 茨城県 日立鉱山

 

8・「火垂るの墓」と人たちの受難 兵庫県 神戸空襲

 

9・海を越えてきた少女たちは、いま 愛知県 名古屋三菱朝鮮女子勤労挺身隊

 

                  富山県 不二越朝鮮女子勤労挺身隊

 

10・温泉の湧く、西伊豆の金山で 静岡県 土肥金山 白川の鉱山

 

11・うるわしい地名の陰に 群馬県 月夜野事件 吾妻線

 

12・瀬戸内海に面した街の、あの時代 兵庫県 相生旧播磨造船所

 

13・フィールドワークで我が街を知る 千葉県 千葉市空襲 大網白里の戦跡

 

14・郷土史の灯を消さないために 奈良県 柳本飛行場 旧生駒トンネル

 

15・大震災の後に 神奈川県 東神奈川 千葉県 船橋 習志野 八千代

 

16・京の都、長い歴史の中で 京都府 ウトロ 京都市内

 

17・島のいくさ世 沖縄県 伊江島

 

18・つながるインターナショナリズムこそ 沖縄県 チビリガマ 根の碑 平和の礎

 

 

 

□「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」が目指すこと、為すべきことは一体どのような事だろうか。201811月にVFOP(平和を求める元軍人の会)の集会で衝撃を受けた。   *詳しくは、ブログ「退役軍人が語る戦場のリアル」参照。

 

第二次大戦での米軍の行為、広島・長崎への原爆投下と東京などへの空襲に対して、ベトナムとイラク戦争に従軍した元米兵の二人は集会の冒頭に壇上に並んで立ち、集会参加者である日本人たちに頭を深々と垂れ謝罪したのだ。二人は74歳と34歳であり、先の大戦は彼らの父や祖父の為した行為なのだ。自分たち自身の行為ではないにも関わらず謝罪を表明した。

 

ひるがえって「PTSDの復員日本兵」は私たちの父親たちであり、彼らはアジア、中国、朝鮮半島の人たちへの侵略者であり加害者である。数々の残虐な行為をアジアの人たちに加えた。

 

PTSDの復員日本兵」の子孫である私たちは被害者の人たちとその子孫にどう向き合えば良いのだろうか。元米兵の二人が謝罪する姿を目前にして答えを見せつけられる思いがした。被害者にきちんと向き合い率直にお詫びすること。全てはそこから始まるのだ、と教えられた。

 

そして、「ルポ 土地の記憶」に出会った。

 

そこでは、謝罪が「ことばから行動へ」と段階が進んでいると私は感じた。受けた被害の補償要求だったり、被害者の気持ちの実現に添う活動が言わば謝罪に他ならないと「ルポ 土地の記憶」は教えているように思う。

 

PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」のアジア・中国・朝鮮半島の人たちへの謝罪とは何だろうか。父親たちがアジア・中国・朝鮮半島の人たちへなした所業を謝罪するとはどういう作業なのだろうか。

 

殺された人たちは生きかえらない。なした所業は無かったことにはできない。今もその子孫たちに負の影響を与え続けている。それはその子孫にも続いていく。決して取り返しはつかない。しかし、つかない取返しだが、だとしても何とか取り返そうと努力をするのが謝罪の作業ではないかと私は思う。

 

著者・室田さんは日本国内の中国人、朝鮮半島の人たちへの殺人、暴力、強制労働があった全国の歴史の地を巡り丹念に探し掘り起こした。

 

私が知ったのは自分の親たち世代が成した残虐な行為を、隠したり風化するに任せず語り継いでいる日本人が少数でも70年以上経た今も頑張っているという事実だ。また、被害者たちが損害に対して補償を求める訴訟を起こしたり、謝罪を求める活動を少数ではあっても支援活動を続けている日本人たちが各地に存在しているという頼もしい事実だ。目が開かれる思いがした。力づけられた。

 

PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」の今後の活動の根底に、加害者の子孫であるという自覚を置くならば、被害者とその子孫の人たちへ「謝罪する行為」が当然なくてはならない。

 

それは「謝罪の気持ちの表明することば」は当然のこととして、被害者の人たちの心に寄り添おうとし、その気持ちの実現に少しでも力を尽くすことが必要なのではないだろうか。それは被害の保障を求める訴訟などを支援する活動を行うということだと思う。

 

 

 著者は2010年に「ルポ 悼みの列島」を上梓している。いわば、「ルポ 土地の記憶」の前編である。私は「ルポ 土地の記憶」を先に知った。今、「ルポ 悼みの列島」に進んだ。

 

 多くの人に室田さんの上記2冊を熱烈にお勧めする。

 

決してこの国も暗い事ばかりではない。無名だが日本各地で70年以上の長きにわたり「真実を語り継いでいる」普通の人たちが存在するのだ。私も普通の人の一人でありたい。「冬来たりなば春遠からじ」なのだと室田さんは私に勇気をくれた。心から感謝している。

 

 

 

2018.12.25  黒井秋夫。